あれは忘れもしない、一週間続いた悪夢のような日々でした。始まりは、右上の奥歯に感じた、微かな違和感。冷たいものが少ししみるような気がしましたが、仕事の締め切りに追われていた私は、それをやり過ごしてしまいました。その数日後、本格的な痛みが牙を剥きました。ズキン、ズキンと、心臓の鼓動とシンクロするかのように、奥歯が内側から主張し始めたのです。市販の痛み止めを飲んでも、効果は一時的。すぐに、より強い痛みとなってぶり返してきます。そして、地獄のダブルパンチが私を襲いました。歯の痛みに呼応するように、右のこめかみから側頭部にかけて、まるで万力で締め付けられるかのような、激しい頭痛が始まったのです。歯が痛いのか、頭が痛いのか。もはや、痛みの震源地さえ分からなくなるほどの混乱状態でした。夜、ベッドに入っても、痛みで一睡もできません。歯の痛みと頭痛が、交互に、あるいは同時に襲ってくるのです。あまりの痛みに、吐き気さえ催してきました。これはただ事ではない。私は翌朝、憔悴しきった顔で歯科医院に駆け込みました。レントゲン写真を見て、歯科医師はすぐに原因を突き止めました。右上の奥歯にできた深い虫歯が、神経まで達して急性歯髄炎を起こしていること。そして、その歯の根の先が、上顎洞という副鼻腔に非常に近く、炎症が影響を及ぼしている可能性が高いとのことでした。「歯の痛みが、関連痛として頭痛を引き起こしている典型的なケースですね」先生の言葉に、私はようやく、この二つの痛みがつながっていることを理解しました。すぐに麻酔をし、歯の神経を抜く治療が始まりました。治療が進み、歯の内部の圧力が抜けた瞬間、あれほど私を苦しめていた歯の痛みが、すっと和らいでいくのを感じました。そして、不思議なことに、歯の痛みが軽くなるにつれて、ガンガンと鳴り響いていた頭痛も、まるでボリュームを下げるかのように、静かになっていったのです。あの経験は、私に二つの教訓を与えてくれました。一つは、体の小さなサインを絶対に無視してはいけないこと。そしてもう一つは、口の中の健康が、いかに私たちのQOL(生活の質)全体を支配しているか、ということです。
私の地獄体験、歯の痛みと頭痛のダブルパンチ