子供が「歯が痛い」と同時に「頭が痛い」と訴えてきた時、多くの保護者の方は、風邪や他の病気を心配するかもしれません。もちろんその可能性もありますが、大人の場合と同じように、子供の頭痛も、歯のトラブルが原因で引き起こされているケースが考えられます。子供は自分の症状をうまく説明できないことも多いため、保護者の方が注意深く観察し、その関連性を疑ってみることが大切です。子供の歯、つまり乳歯は、大人の永久歯に比べて、表面のエナメル質や象牙質が薄く、柔らかいという特徴があります。そのため、一度虫歯になると、その進行スピードが非常に速いのです。昨日まで小さな穴だったものが、あっという間に神経(歯髄)の近くまで達してしまうことも珍しくありません。虫歯が神経まで進行して「歯髄炎」を起こすと、大人と同じように、ズキズキとした強い痛みが生じます。この強い痛みの信号が、神経(三叉神経)を介して、関連痛として頭痛を引き起こすことがあります。子供が、歯の痛みを訴えるのと同時に、こめかみや頭の片側を押さえて「ここも痛い」と言うような場合は、この関連痛の可能性を考えてみるべきでしょう。また、もう一つ注意したいのが、上顎の奥歯の虫歯が原因で起こる「副鼻腔炎」です。子供の骨はまだ発達途中のため、上顎の歯の根と、鼻の横にある副鼻腔(上顎洞)との距離が、大人よりもさらに近い場合があります。そのため、歯の根の先の感染が、容易に上顎洞に波及し、炎症を起こしてしまうのです。鼻水や鼻づまりといった、風邪に似た症状と共に、頬のあたりや頭が重い、痛いと訴える場合は、歯が原因の副鼻腔炎かもしれません。小児科や耳鼻科で風邪の治療をしてもなかなか治らない、という場合には、一度、歯科の観点からチェックしてもらうことが重要です。子供が歯の痛みや頭痛を訴えた時は、まず口の中をよく見てあげてください。歯に黒い穴が開いていないか、歯茎が赤く腫れていないかを確認しましょう。そして、早めに小児歯科を受診し、正確な診断をしてもらうことが、子供を不快な症状から早く解放してあげるための、親としてできる最善の行動です。