歯を守るための正しい力の入れ具合
歯磨きの目的は、歯の表面に付着したプラークを効果的に取り除くことです。この目的を達成するために、強い力でゴシゴシと磨く必要があると考えている方がいらっしゃいますが、それは大きな誤解です。実は、プラークはそれほど硬いものではなく、歯ブラシの毛先がきちんと当たっていれば、軽い力でも十分に除去することができるのです。では、その「軽い力」とは、具体的にどのくらいなのでしょうか。よく例えられるのが、「歯ブラシをペンを持つように握る」という方法です。グーで握りしめてしまうと、どうしても余計な力が入ってしまいます。ペンを持つように軽く握ることで、自然と適切な力加減になりやすくなります。力加減の目安としては、だいたい百五十グラム程度と言われています。キッチンスケールなどに歯ブラシを押し当てて、どのくらいの力なのかを実際に試してみると分かりやすいかもしれません。歯ブラシを歯に当てた時に、毛先が少ししなる程度で、毛先が広がりすぎないのが理想的な圧です。もし磨き終わった後に歯ブラシの毛先がすぐにバサバサに開いてしまうようなら、それは力が強すぎる証拠です。強すぎる力でのブラッシングは、百害あって一利なしです。歯の表面を傷つけ、知覚過敏の原因を作ったり、歯茎を後退させてしまったりと、様々なトラブルを引き起こします。それだけでなく、強すぎる圧力で歯ブラシの毛先が寝てしまうと、かえってプラークの除去効率も落ちてしまいます。大切なのは、力を抜いて、歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目や歯と歯の間にきちんと届かせる意識を持つことです。そして、一本一本の歯を意識しながら、小刻みに優しく磨く。この丁寧なブラッシングこそが、歯を守るための最も効果的な方法なのです。