原因不明の慢性的な頭痛に悩まされ、脳神経外科や内科で検査を受けても、特に異常は見つからない。鎮痛剤を飲んでも、その場しのぎにしかならない。そんな「診断のつかない頭痛」の持ち主は、意外と多くいらっしゃいます。もし、あなたがそんな状況にあるのなら、一度、その視線を「口の中」に向けてみるべきかもしれません。その長年の頭痛、もしかしたら歯医者で解決できる可能性があるのです。歯科領域が原因で起こる頭痛は、大きく分けて二つのパターンがあります。一つは、虫歯や歯周病といった「歯の炎症」が引き起こす頭痛です。特に、上顎の奥歯の炎症が、鼻の横にある空洞(上顎洞)に波及して起こる「歯性上顎洞炎」は、頬の奥の痛みや、頭全体が重くなるような頭痛を伴います。この場合、耳鼻科で副鼻腔炎の治療を受けても、原因である歯の治療をしない限り、完治することはありません。また、歯の神経の強い炎症が、関連痛としてこめかみや側頭部に痛みを感じさせることもあります。もう一つの、そしてより見過ごされがちなのが、「噛み合わせの異常(咬合不良)」が原因となる頭痛です。これは、いわゆる「緊張型頭痛」の一種です。高さの合わない被せ物や、抜けたまま放置された歯、あるいはストレスによる無意識の食いしばりなどによって、顎の位置が本来あるべき場所からずれると、頭の重心のバランスを保とうとして、顎、首、肩の筋肉が常に緊張した状態になります。特に、こめかみにある「側頭筋」は、噛む時に使われる主要な筋肉であり、この筋肉が凝り固まることで、直接的にこめかみ周辺の頭痛を引き起こすのです。朝起きた時に顎がだるかったり、口が開きにくかったり、肩こりがひどかったりといった症状が、頭痛と共にある場合は、この噛み合わせが原因である可能性が非常に高いと言えます。これらの歯科的な問題を解決するためには、当然ながら歯科医院での専門的な診断と治療が必要です。原因となっている歯の炎症を治療したり、マウスピース(ナイトガード)を作成して歯ぎしりや食いしばりから筋肉を守ったり、被せ物の高さを調整して噛み合わせのバランスを整えたりすることで、長年悩み続けた頭痛が嘘のように解消されるケースは、決して珍しくありません。医科で原因が見つからない頭痛こそ、歯科を受診する価値があるのです。
その頭痛、内科より先に歯医者かも?