歯の痛みを震源地として、肩こりやリンパの腫れといったドミノ倒しのような不調に悩まされている場合、マッサージや湿布薬、鎮痛剤といった対症療法では、決して根本的な解決には至りません。火元である歯のトラブルを消し去らない限り、煙は何度でも立ち上ってくるのです。本当の意味でこれらの症状から解放されるためには、歯科医院での専門的な治療が不可欠です。まず、歯科医師は、問診やレントゲン撮影、視診などを通じて、不調の根本原因となっている歯を正確に特定します。原因が、神経まで達した深い虫歯であれば、感染した神経を取り除き、歯の根の中を清掃・消毒する「根管治療」が行われます。原因が親知らずの炎症(智歯周囲炎)であれば、まずは抗生物質で炎症を抑え、その後、再発を防ぐために「抜歯」が検討されます。歯周病が進行して歯茎に膿が溜まっている場合は、歯石を除去し、膿を出す処置(排膿)が行われます。これらの歯科治療によって、感染と炎症の大元を取り除くことが、すべての治療のスタートラインです。歯の治療が進み、炎症が治まってくると、防御反応として腫れていたリンパ節は、自然と元の大きさに戻っていきます。通常、リンパの腫れ自体に特別な治療は必要ありません。原因が取り除かれれば、体は自ら正常な状態に回復していくのです。一方、歯の痛みや噛み合わせの不調によって引き起こされていた肩こりは、原因がなくなっても、すぐに完全には解消されない場合があります。長期間にわたって筋肉が緊張し、血行不良の状態が続いていたため、筋肉自体が硬く凝り固まってしまっているからです。この場合は、歯科治療と並行して、理学療法士によるリハビリテーションや、鍼灸、マッサージといった治療が効果的なこともあります。また、噛み合わせのバランスを整えるために、マウスピース(スプリント)を作成したり、被せ物の高さを調整したりする治療も、肩こりの根本解決には非常に重要です。このように、歯痛、肩こり、リンパの腫れの治療は、まず歯科で炎症の元を断ち、その後、必要に応じて他の専門分野と連携しながら、体全体のバランスを整えていく、という総合的なアプローチが必要になるのです。
根本解決へ、歯痛・肩こり・リンパの治療