歯茎が腫れている、歯茎から血が出る、歯がぐらつく。これらの症状は、「歯周病」の典型的な症状として広く知られています。しかし、実はこれらの症状は、「歯肉癌」の初期症状としても現れることがあるため、両者の見分けは非常に重要であり、時に専門家でも判断が難しい場合があります。ただし、一般の方がセルフチェックを行う上で、いくつか「歯肉癌をより強く疑うべき」ポイントが存在します。まず、症状が現れている「範囲」に注目してください。歯周病による歯茎の腫れや出血は、多くの場合、歯垢や歯石が溜まっている場所を中心に、複数の歯にわたって、比較的広範囲に起こります。歯磨きをすると、あちこちから血が出る、というような状態です。一方、歯肉癌の場合は、特定の歯の周りだけ、つまり「限局的」に、強い腫れや、カリフラワー状の異常な盛り上がり、ただれなどが起こることが多いのが特徴です。口の中全体ではなく、一箇所だけが、明らかに他の部分とは違う様相を呈している場合は、注意が必要です。次に、「歯のぐらつき方」です。歯周病で歯がぐらつくのは、長年にわたって歯を支える骨が徐々に溶かされていった結果であり、通常はゆっくりと進行します。しかし、歯肉癌の場合は、癌細胞が急速に骨を破壊するため、比較的短期間のうちに、特定の歯が急激に、大きくぐらつき始めることがあります。今まで何ともなかった歯が、数週間から数ヶ月の間に、指で触ると明らかに動くようになった、という場合は、単なる歯周病ではない可能性を疑うべきです。さらに、「腫れの性質」にも違いがあります。歯周病による腫れは、ぶよぶよとしていて、指で押すと膿が出てくることがあります。対して、歯肉癌による腫れは、表面がザラザラしていたり、硬いしこりのように感じられたりすることが多いです。また、癌の表面は非常にもろく、歯ブラシなどが少し触れただけでも、大量に出血することがあります。歯周病の治療、つまり歯石除去や丁寧なブラッシングを行っても、一向にその部分の症状だけが改善しない、むしろ悪化していく、というのも、癌を強く疑うべき危険なサインです。これらの見分け方は、あくまで一般論です。「歯周病だと思っていたら、実は進行した歯肉癌だった」というケースは、決して少なくありません。症状に気づいたら、自己判断は絶対にせず、必ず歯科医院を受診してください。
歯周病と歯肉癌、その見分け方のポイント