正直に告白すると、私は大の歯医者嫌いでした。特に、あの「キーン」という音と、歯を削られる感覚が苦手で、何年も歯科検診から逃げ回っていました。そんな私が、重い腰を上げて歯石取りを決意したのは、鏡に映る下の前歯の裏側に、黄色い塊がびっしりと付いているのを見つけてしまったからです。そして、最近なんだか口臭も気になる。これはまずい、と観念したのでした。予約の日、私の心臓は緊張でバクバクしていました。「痛かったらどうしよう」。診察台の上で、そんなことばかり考えていました。歯科衛生士さんは、そんな私の気持ちを察したのか、「痛かったらすぐに手を上げてくださいね」と優しく声をかけてくれました。最初に使われたのは、超音波スケーラーという機械でした。キーンという音と共に、先端から水が噴射され、歯に当てられます。正直なところ、最初は少し痛かったです。特に、歯茎が腫れている部分や、歯の根元あたりは、ズンと響くような、しみるような痛みがありました。何度か、思わず手に力が入ってしまいました。そのたびに衛生士さんは、機械のパワーを弱めてくれたり、少し休憩を挟んでくれたりしました。後半は、手用の器具(ハンドスケーラー)で、細かな部分をカリカリと取っていきます。こちらは痛みはほとんどありませんでしたが、歯石が剥がれる時の感覚が少し不思議でした。一時間ほどの格闘の末、私の歯石取りは終わりました。口をゆすぐと、血が混じっていました。しかし、それ以上に驚いたのは、舌で歯の裏側を触った時の感覚です。今までザラザラしていた場所が、信じられないくらいツルツルになっていました。鏡で見ると、あの黄色い塊は跡形もなく消え、歯と歯の間に隙間ができたようにさえ感じます。確かに、処置中には痛みを感じる瞬間もありました。しかし、それ以上に、口の中が生まれ変わったような爽快感と、長年の悩みが解消された解放感の方が、何倍も大きかったのです。あの時、勇気を出して歯石取りを受けて、本当に良かった。今では、このツルツルの歯を維持するために、定期的なクリーニングに通うのが楽しみになっています。