疲れが溜まると口内炎ができる、というのは多くの人が経験することです。ビタミン不足やストレスが原因と言われ、市販薬を塗ったり、ゆっくり休んだりすることで、いつの間にか治っていることがほとんどでしょう。そのため、口内炎を重大な病気のサインと捉える人は少ないかもしれません。しかし、その「いつもの口内炎」という認識が、時には危険な見落としに繋がる可能性があります。注意すべきなのは、治りにくい口内炎です。もし、お口にできたできものが二週間以上も治らない、あるいは徐々に大きくなっているようなら、それは単なる口内炎ではないかもしれません。歯肉癌をはじめとする口腔癌の初期症状は、口内炎と非常によく似ていることがあるのです。特に、初期の歯肉癌は痛みを伴わないケースが多く、自覚症状が乏しいために発見が遅れがちになります。痛みがないから大丈夫、と放置してしまうことが、最も避けなければならない事態です。普段から自分の口の中をチェックする習慣がないと、こうした変化に気づくことすら難しいかもしれません。歯磨きのついでに、鏡で歯茎の色や形、舌の状態などを観察するだけでも、早期発見の可能性は高まります。もし、いつもと違う硬いしこりがある、表面がただれて色がまだらになっている、原因不明の出血がある、といった症状に気づいたら、それは体が発している重要な警告サインです。不安を煽るわけではありませんが、楽観視も禁物です。癌は早期に発見し、治療を開始すれば、それだけ治る可能性も高くなります。気になる症状があれば、決して放置せず、まずは歯科や口腔外科の専門医に相談してください。その少しの勇気が、あなたの未来を守ることに繋がります。